知ってる人はマインドマップを経験してる

政府支出は内需を増大させる要因である。 したがって、政府部門が内需拡大要因になっているかどうかを見るためには、税・社会保険料収入などの政府収入から政府支出を差し引いた大きさを見なければならない。
大きさがプラスであれば、政府部門は差し引き内需を抑制していることになり、経常収支の黒字要因になる。 それに対して、差がマイナスであれば、政府部門は差し引き内需を拡大させており、経常収支の赤字要因となる。
政府収入から政府支出を差し引いたものを、政府収支は財政収支という。 これがプラスであれば財政は黒字であり、マイナスであれば財政は赤字になる。
財政が赤字の場合には、国や地方政府は、国債は地方債を発行して赤字を埋めることになる。 財政赤字は内需を拡大させるから経常収支の赤字要因であり、逆に、財政黒字は経常収支の黒字要因になる。
日本と米国の政府収支の対GNP比の推移を示したものである。 日本では87年から政府収支の対GNP比がプラス、すなわち、財政は黒字になっており、経常収支黒字の大きな要因となっている。
米国では、財政赤字の対GNP比が80年代の初め頃から拡大し始め、米国では財政赤字が大きいことが、経常収支の赤字要因になっている。 米国の長期的経常収支の赤字要因をまとめると次のようになる。
ち財政赤字が大きい。 したがって、米国の長期的な経常収支の赤字を縮小させるには、民間部門が貯蓄率を引き上げると共に、財政赤字を削減する必要がある。

財政赤字の削減のためには、税金・社会保険料の国民負担を引き上げるか、あるいは政府支出を抑制するか、両方を実施するかしなければならない。 他方、日本では財政黒字が経常収支黒字の一因になっている。
日本の巨額な国債残高や赤字財政などが大きく問題になっている折に、日本の財政が黒字であるということは不思議に思われるかも知れない。 謎を解く鍵は、政府収支が中央と地方政府の収支合計と社会保障基金収支の合計から構成され、うちの社会保障基金収支が大きな黒字になっている点にある。
中央政府も地方政府も財政は赤字であるが、社会保障基金の黒字が大きいため、社会保障基金も含めた日本全体の財政は黒字になるのである。 社会保障基金とは、国民から厚生年金・国民年金の保険料を徴収して、それを運用して利益をあげると共に年金受給者に年金を支払う基金をいう。
現在までのところ、保険料収入と運用益等から構成される同基金の経常受け取りが、年金支払い等から構成される経常支払いを大きく上回っているため、同基金は黒字である今後2000年に向けて高齢化が進展すると共に、年金支払いが増大するので、社会保障基金の黒字も縮小していくであろう。 それに伴って日本の財政黒字も減少し、経常収支の黒字要因としては小さくなっていくであろう。
為替レートと経常収支の関係が大きくなるにつれて、円・ドルレートがファンダメンタルズに比べて高すぎるという考えから、1985年9月に、各国の国際協調(ときの国際的な合意を、合意された場所であるホテルの名をとって、プラザ合意という)の下に、ドル安誘導が開始された円高・ドル安になれば、米国の日本への輸出が増大し、逆に米国の日本からの輸入が減少することによって、米国の対日経常収支赤字(日本の対米経常収支黒字)も減少すると予想されたためである。 為替レートの経常収支調整機能円・ドルレートの低下(円高・ドル安)は日本の経常収支の黒字を縮小する効果を持ったであろうか。
点を検討するに先立って、円・ドルレートの変化がどのような場合に日本の経常収支の黒字の縮小につながるかを説明しておこう。 日本の経常収支をドルで表示したものをドルベースの経常収支、円で表示したものを円ベースの経常収支という。
まず初めに、ドルベースの経常収支から考えてみよう。 ドルベースの経常収支は、ドル建て輸出金額からドル建て輸入金額を引いたものである。

ドル建て輸出金額はドル建て輸出価格に輸出数量を掛けたものであり、ドル建て輸入金額はドル建て輸入価格に輸入数量を掛けたものである。 米国の輸出業者は円・ドルレートが低下しても米国のドル建て輸出価格を引き下げようとはしないであろう。
したがって、日本のドル建て輸入価格は100ドルのまま据え置かれる。 円・ドルレー卜は低下しているので、これを円建ての輸入価格に直すと1万円になり、約16・7%の引き下げになる。
日本の輸入業者は円建て輸入価格が下がったため、輸入数量を増やすであろう。 かりにそれが94まで増加すると仮定すると、ドルベースの輸入金額は9400ドルになり、円・ドルレートの低下前よりも400ドルだけ増加するが、円ベースの輸入金額は94万円になり、14万円の減少になる。
ようにドルベースでは輸入金額が増大するのに、円ベースでは減少するのは、円ベースの輸入価格が引き下げられた(16・7%の引き下げ)ほどには、輸入数量が増加しなかった(4・4%の増加)からである。 数値例では円高・ドル安にもかかわらず、ドルベースの輸出金額はかえって増大し、増大額がドルベースの輸入金額の増加を上回るため、日本のドルベースの経常収支の黒字は収支でみると、12万円から10万5000円になり、黒字は1万5000円減少している。
ように、円高・ドル安によってドルベースの経常収支はかえって増大するが、円ベースでみると減少するという逆の現象が起こっている。 ただし輸入数量があまり増加しなければ、円ベースの経常収支の黒字も増加することがあり得る。
例えば輸入数量が92までしか増えなければ、円ベースの経常収支の黒字も500右の数値例から分かるように、円高・ドル安によって、かえって日本の経常収支の黒字が増加するのは、輸出数量と輸入数量の変化がドル建て輸出価格や円建て輸入価格の変化に比べて小さいからである。 一般に、比較的短い期間をとると、輸出入価格の変化に対して輸出入数量は、大きく変化しないと考えられる。
輸出入価格が変化して、変化が長い期間にわたって持続すれば、輸出入数量も次第に大きく変化することにより、長期的にはドルベースでみても円ベースでみても日本の経常収支黒字は減少していく。 例えば米国に機械を輸出している日本のメーカーを考えてみよう。

輸出メーカーが米国市場に参入して機械を販売する際には魚流通・販売網を構築して顧客の獲得に努め、修理部門なども設置してアフターサービスに努めなければならない。 したがって円高・ドル安になって輸出の採算が多少とれなくなったからといって、米国での販売量を減らしたり、米国市場から撤退したりすると、流通網などの「見えざる資産」を失うことになる。
それらを一度失ってしまうと、将来円・ドルレートが上昇して、円安・ドル高に戻っても、再び米国市場で販路を開拓することは困難になる。 そうであれば多少円高になったからといって、直ちに販売量を減らしたりすることは得策ではない。
円高・ドル安が長期にわたって続けば、たとえ「見えざる資産」を失っても、採算のとれない輸出をいつまでも続けるよりも有利になるので、販売量を減らし、米国市場から撤退する企業が増えるであろう。 同じことは輸入企業にもあてはまる。
例えば円高・ドル安になっても、日本の建設産業や自動車産業は、外国からの鉄鋼輸入をそれほど増やさず、日本の鉄鋼メーカーから購入し続けることが多い。

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